秘密の地図を描こう

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「……誰だ?」
 自分達の部屋から出てきた人影に、シンは思わずこう呟く。
「軍服を着ていたってことは、ザフトの人なのか?」
 だが、自分達とそう変わらない体格をしていた。それなのに、と考えて、すぐにやめる。
 自分達と同じような体格と言えば、ニコルだってそうだ。
 だが、彼がザフトでもトップクラスの実力を持っていたと言うことを疑う者はいない。
 前の大戦の時に負ったけががなければ、今でも最前線に出ていたのではないか。
 しかし、だ。
 体格はともかく、ニコルの体はかなり鍛え上げられている。彼の所作一つからでもそれは推測できた。
 だが、先ほどの彼からはそれは感じられない。
「……レイに聞けばわかるか?」
 もっとも、本人が教えてくれれば、だが。
「あいつ、なんか隠しているんだよな」
 自分達に、と続ける。だが、それが何であるのかがわからない。旨くごまかされているようなのだ。
「そんなに、俺たちが信用できないのか?」
 あるいは、それほどまでに知られたくないことなのか。
「誰にだって、知られたくないことはあるだろうけど、さ」
 それならば、それと言ってくれればいいのに。そんなことも口にする。
「まぁ、いいか。当たって砕けろ、だ」
 聞いてみて、その反応を見てから考えよう。シンはそう結論を出す。
「と言うことで、帰るか」
 部屋に、と付け加えると歩き出した。
「ただいま」
 そう言いながら部屋の中に入る。
「遅かったな」
 珍しくもうれしさを隠しきれない、と言う表情でレイが言い返してきた。
「何かあったのか?」
 頬が緩んでるぞ、とシンは指摘する。
「あぁ。先ほど、いい知らせを受け取ることができたから、そのせいだろう」
 身内の、とレイはさりげなく付け加えた。
「そうなんだ」
 こう言われては、それ以上突っ込めない。
「じゃ、さっきの人が?」
 代わりにこう問いかけてみる。
「あぁ。レポートの不備の指摘ついでに教えてくれた」
 ニコルの知り合いで、開発を担当している人だそうだ……と彼は教えてくれた。仕事帰りに寄ったのだとも、付け加える。
「納得」
 それならば、今の時間だったことも理解できた。
「……ところで、課題は終わらせてきたんだろうな?」
 そう考えていたとき、逆にこう問いかけられる。
「課題?」
 そんなもの、あったか? と思わず呟いてしまう。
「やはり忘れていたか」
 ため息混じりにそう言い返される。
「戦術の講義で出されただろうが」
 そのまま、彼はこう言う。
「……そういえば、そうだったか?」
 確かに、あれがそうだと言われればそうかもしれない。だが、違うと思えば思える内容だった。
 しかし、それが引っかけの可能性はある。
「まず……」
 だとするなら、と思わず凍り付く。
「がんばれば消灯までに終わるだろう」
 やらないよりは不出来でもやった方がいいぞ、と言われてシンは動き出した。

 それにしても、今日のレイはあれこれと話してくれたが、何か違和感を感じるのは錯覚だろうか。
 ひょっとして、上手くごまかされたのかもしれない。そう気づいたのはベッドに入ってからのことだった。

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最遊釈厄伝